【NewsLetter172】「誇りと緊張と」福岡保護観察所長荒木龍彦

 昨年も,当保護観察所は,九州ダルクの皆様にたいへんお世話になりました。ありがとうございました。1年の締めくくりの九州ダルクのクリスマス会には,保護観察官や地元の保護司さんたちと共に参加させていただきましたが、大盛り上がりでした。100名以上は楽に超えるたくさんの参加者が,それぞれにとってもよい表情でいて,お互いに声を掛け合い支え合っている雰囲気はとてもすばらしかったです。

 ダルクのみなさんにとって、このお仲間こそがご自分たちの誇りの源なのだと思います。

 そう、ダルクのみなさんと交流していると、メンバーの方にそこで生活するご自分への誇りというものをとても感じます。もちろんダルクにいることが目的ではなく、将来に何らかの目標を置いているお気持ちはどなたにもあります。それでも、自分に正直であることを信条にして、仲間を大切にしながら、自分自身としっかり向き合って生活している今のご自分には、一定の納得を感じ、誇りとしておられる面が確かにあるのだと思います。そのような日々を提供するダルクのプログラムの場は本当にすばらしいと思います。

 一方で、ダルクの方々は、ダルクの外の人間関係の中では、結構とまどうこともあるようです。お仲間と送る生活に誇りを感じながらも,外部の人々に会うことには気後れする面を人並み以上にもっておられるのかもしれません。さまざまな立場の人と交流するたびに、終わってから緊張した、緊張した、緊張した、とおっしゃいます。立派に体験や考えを伝え、聴いた人に大きな感動や好感を与えているのに、です。まあ、ダルクと他の団体の人たちが出会う場は、いつも双方に新鮮な緊張と感動があったということだと思います。

 福岡では,去年もいろいろな場面でダルクの方々に登場していただいてきました。検察庁に保護観察所のプログラムの説明を求められた時には、検事さんにも加わっていただき模擬プログラムを実施しましたが,やはりこの時も九州ダルクの施設長さんに出席してもらいました。

 更生保護女性会の会員が100名ほど集まった研修会に来ていただいた時のことも忘れられません。九州ダルク、北九州ダルクから男女1名ずつ合計4名のスタッフの方が体験を述べ,大きな感動を会員の人たちに与えました。そのお話のなんと赤裸々で力強かったこと。会員の人たちには、他のだれがどんな説明をするよりもダルクの意味がよく理解されたと思います。

 保護司さん方とも交流したいとおっしゃるので,それならまずはということで、更生保護サポートセンター(全国の保護司会ごとに設置が進んでいる施設)でダルクの説明や体験を話してもらいました。九州ダルクは、それをパブリックミーティングと名付けて、毎月各地のセンターで続けておられます。保護司の方々の前で体験を語るその活動は、同じ依存症の人に伝える「メッセージ」とは異なりますが、しかしまた単なる広報活動以上のものがあるとこれまでの様子をうかがって感じています。

 そこではメンバーの方が体験と現在のご自分の思いをしっかりと述べることに、保護司さん方も驚き、喝采の拍手を送っていました。その出会いは、お互いにとって「和解」とでも言える体験であったのではないでしょうか。この「和解」は、もちろんこじれた関係を修復するという意味合いではありません。何となくお互いが設けていた心理的障壁を取り払うということの延長のようなものだと思います。

 今年もいろいろな人とダルクの方々との出会いがあり、あのクリスマス会の時のようにお互いに緊張せずやわらかな表情で話し合える関係がどんどん広がっていけばと思います。

カテゴリー: 172号(2014年1月), ニューズレター タグ: , パーマリンク