薬物依存症は死に至る病です。九州ダルク開設から手伝って20数年になりますが、ここで回復に向かっていた数名の若者が命を絶ちました。
薬物依存症は治らない病気です。依存薬物を何年止めていても依存は続きます。再使用の欲求は治まることがありません。再使用をすればさらに依存を深めます。
薬物依存症は人を選びません。貧富を問わず、男女を問わず、学歴を問わず、社会的地位を問いません。貧しい家庭で育った若者もいますが、裕福な家庭の子もいます。中学卒業もいれば著名な大学出身者もいます。医師や学者だった人もいれば、定職を持ったことがない人もいます。
背景に、家族関係にも人間関係にも社会関係にも高い壁や深い溝をかかえ、とてつもない生きづらさを担っています。
しかし、回復できる病気です。
ダルクは薬物依存症者による薬物依存症者のための回復施設です。治療や福祉の対象ではなく、薬物依存症者が主体となってみずから回復していくための自助グループです。
ダルクでは、強制も暴力も威嚇も命令も使いません。回復を希求する仲間とそこに宿る力によって、みずからの変革と回復を求めます。毎日繰り返すダルクミーティングでは、いいっぱなしのききっぱなし、正直に話すことだけがルールです。薬を使いたいことも使ったこととも正直に話します。
回復者は社会の方にある障壁を照らしだします。自分を変え、家族関係を変え、人間を変え、そして社会を変えます。なによりいま部屋の片隅で一人で膝を抱えて孤立し、絶望に陥っている仲間の光となります。ダルクでは今日のユーザーを明日の回復者に変えることができます。私たちの社会にとってかけがえのない宝です。
ダルクの活動は公的支援金と皆様の寄付に支えられています。今年度7か月で232名の方にご寄付いただきました。楽しみにしていた旅行を見合わせた、好きな映画を我慢した、あるいは夕食のおかずを一品を減らした–−。そのお金をご寄付いただきました。皆様にとって命のお金です。今後とも命のお金を是非ともご寄付いただけますようよろしくお願いします。
九州ダルクを支援する会 弁護士 八尋光秀