「仲間です。」
これは,福岡保護観察所に赴任する前、私が担当していたMさんのケア会議の話で、「この人が回復するのに一番必要なのは何でしょうか?」と疑問を投げかけた人に対し、ダルクスタッフが間髪入れずに語った言葉です。もう3年前の話ですが,私は今でも頭から離れずにこの言葉が残っています。
保護観察所では、刑の一部執行猶予導入を契機として、これまで以上に薬物問題で罪を犯してしまった人に対して、ダルクや医療機関等と連携するなどして処遇を行うことが求められています。
場合によっては,生活環境調整中(釈放後の帰住予定地の調整)に、当事者の方々に対し、釈放後に直接ダルクに入所して治療に専念してみることを提案したり、釈放後すぐに医療機関を受診することができるよう働きかけを行うことがあります。
私が担当していたMさんもその1人でした。Mさんは、すでに家族が引受意思を有していたことなどから、当初ダルクに入所することに消極的でしたが、ダルクに入ることが本人に有用であることを話すことなどの働きかけをした結果、最終的にダルク入所を希望され、 ダルクが運営する自立準備ホームに仮釈放となりました。
Mさんは、仮釈放後、覚せい剤後遺症と思われる手足のしびれなどの体調不良を訴えていましたが、ダルクスタッフ、ダルクと連携している精神科の医師や看護師の細やかなサポートを得られた結果、仮釈放期間が満了する頃には、表情が見違えるように良くなりました。仮釈放期間満了後、Mさんは「1人で頑張ってみたい。」と述べられ、ダルクを退所されましたが、退所後も当時入所していたダルクスタッフとはたまに連絡を取っていると伝え聞きました。
当所で実施している薬物再乱用防止プログラムに、九州ダルクから、イジケムシさんやマーさんにアドバイザーとしてご助力をいただいておりますが、プログラム内での発言でも「仲間がいるから」「仲間から言われて」という言葉をよく耳にします。私自身、断薬を継続する上で仲間の存在がいかに重要かということをダルクの皆様に教わることができたように思います。保護観察所としてできることは限りがありますが、当事者の方々に何か少しでも「きっかけ」を与えられるよう努めていきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。