こんにちは。いつも、トキさんをはじめ、九州ダルクの皆さまには大変お世話になっております。
このたび、ニュースレターへの投稿についてお声をかけていただきました。光栄なこととは思いながらも、正直、少し気が重くなりました。と言うのも、このような文章を書くのは、遡ることうん十年前の若かりし学生時代に、読書感想文を書いた時以来だからです。
さて、何を書いたらよいものか、もやもやとしながら職場の廊下を歩いていたら、壁にかかっている絵が目に止まりました。
トキさんやオビトさんも見ただろうこの絵のことで、私が心に浮かんだことを書かせていただこうと思います。
残暑が厳しい9月頃、センターの薄暗い廊下の白い壁に新しい絵が飾られました。それは、ある病院の院長から、センターを利用される方のために、殺風景な壁に彩りをと、ご厚意でお貸しいただいたものだと聞いています。
その絵は、高さが1メートル余りもあるでしょうか。背景は一面黒色、キャンバスの中央に、白色の細い線が折り重なり合ったものが描かれています。抽象絵画と呼ばれるもので、何が描かれているのか、さっぱり私にはわかりません。
その絵の前に立ち、「これはいったい何だろう?」と同僚に問いかけてみました。
「私はいちごに見えます」「食い意地が張っているのかしら」と彼女は笑いました。そう言われれば、輪郭はいちごの形に似ています。
また、もう一人の同僚に同様に問いかけてみました。すると、「僕は人の心臓に見えますね」と。
私には、その絵の中に、能面のような人の顔が見えており、二人の同僚の答えは意外なものでした。
また、ある時、「この絵は何だかモヤモヤと霧がかかったように見えますね」と所長に投げかけてみました。すると所長は、「そうですか?私はスッキリとした感じがします」と言うのです。
果たして、この絵の作家は何を伝えようとしていたのだろうか?と想像が膨らみます。作家が、この一連の私たちのやり取りを聞いていたら、「まったく他人は勝手なものだ」と呆れていることでしょう。
作家の意図をよそに、見る人は、絵に何かを感じ、意味を見出そうとします。感じ方は、その人の経験やその時の心の有り様によって異なるのかもしれません。
いちご、心臓、能面、もやもや、すっきり。こうも捉え方が異なるものかと面白く感じます。隣の人が今何を感じているのか、絵を媒介にしたコミュニケーションも楽しいものです。
あなたは、この絵の中に何を見ますか?福岡県精神保健福祉センターにお越しの際は、よろしかったら感想をお聞かせください。