【NewsLetter240】立ち上がらせて 美野島司牧センター長 マルセル神父

コロナウイルスの中で行われる皆さんのリハビリは大変な事になりましたね。ウイルスの感染を恐れることなどで、なんとなく閉塞的になってしまい、リハビリのためにとても必要とする仲間たちとの出会いやふれあいが少なくなり、人を好きになったり、共に何かを作ったり、自らの意思で物事を決定し、心は自由に動くのに現実を動かせない時があり、自分の殻に閉じこもり嘆き悲しむ心で、布団の中でぬくぬくしてしまう危険性がありますね。そこから出ようとする事は大変厳しくなります。

美野島司牧センターとDARCの関わりは27年になります。その時、神様からお告げのようにDARCとの出会いがありましたので昨日の事のように覚えています。美野島に来て間もない頃、数人の薬物依存症の若者がリハビリをする場所を求めて相談に来ました。薬物依存症の世界に全く無知だった私は、彼らを迎える事は無理だと思い即座に返事ができませんでした。それで、とりあえず彼らを一週間センターに滞在させ、福岡でリハビリできる場所を一緒に探しましょうという話になりました。

そして彼らが美野島に滞在していたある日の真夜中の出来事です。3時ごろ大きな笑い声で私は起こされました。そのグループの1人の若者が、教会の屋上に上がり袋の中にシンナーを入れて一生懸命に吸っていた。そして私の顔を見て「私はチョウチョウだ、私はチョウチョウだ」と叫び下の通りに飛び降りようとした時、捕まえたその若者。彼の腕をそっと掴んで静かに彼の仲間が寝ている部屋まで連れて行きました。翌朝真っ先に仲間が彼を病院に連れて行きましたが、私は聖堂に祈りに行って考え込んだ。

この若者を通して神様は合図して「この人は見捨てられないよ」というメッセージを私に送ったのではないかと感じました。

ともかく、あの夏の真夜中の衝撃的な出来事以来、美野島司牧センターに彼らを受け入れ共に今日まで歩んできました。

27年の間に仲間の結婚や社会復帰などの大きな喜びを共に祝い、仲間の大切な命を失った時の悲しみも分かち合いました。その時こそ私たちの間に強い絆がうまれ、その絆を持って今のコロナウイルスによる困難の中で美野島司牧センターでのDARCの存在を必要とされています。

今日コロナウイルスにより大変な状況となってしまいました。

しかし、苦しい時こそこのチャレンジに挑戦して答える事で自分の自信、リハビリの目的を新たにするきっかけでもあります。DARCの道を新しい心で、12ステップを踏みながら、自由を勝ち取り、社会復帰を信じて歩いて行く事です。「立ち上がらせて歩き出しなさい」厳しい時こそ自分の心の中でこの言葉が強く響くと思います。

自由に生き生きと暮らして行くことが神様の望みです。神様には大切な人しかいない。排除しなければならない人、裁かなければならない人はいません。

皆さんと一緒に勇気を持って生き生きと歩いて行きましょう。

カテゴリー: 240号(2021年6月), ニューズレター パーマリンク