【NewsLetter249】DARCでこころ打たれた初めてのミーティング O教会Y神父

薬物依存症の方と初めて会ったのは、今か ら30年ほど前のことになる。当時は福岡教区の本部事務局に勤めていた。ある日、横浜の知人神父から電話があり、近々薬物依存のスマイルさんという方が訪ねていくと思うからよろしく頼む、ということだった。

当時は薬物依存症についてはまったくの無知で、当然、依存症の方とは会ったことはなかった。正直いって、会うのが少し怖い気もしていた。薬物というと、その時は覚醒剤のことしか思い浮かばなかったからだ。

スマイルさんが訪ねて来た。小机を挟んでソファーに座って向かい合い、話を聞いた。 机の上に置いた彼の手を見ると小指が無かった。その時も怖い気持ちがあったことは隠せない。

スマイルさんの訪問の目的は、九州で初めてのDARC(ダルク:薬物依存症者回復施設)を開設したいということだった。

事は不思議なくらいにスムーズに運んだ。今は新築された美野島司牧センターの中にダルクはあるのだが、当初は廃園となった幼稚園の建物を利用していた。その一室で毎日ミーティングが行われていた。

オープンミーティングに初めて参加した時の「感動」を今もはっきりと覚えている。この「感動」がダルクとの絆を作ってくれたと思う。

ダルクのメンバーにとってミーティングは命だ。彼らはミーティングで自分の経験や思いを語る。「新人」はまだ何も語ることができないほど弱っていたりするのだが、話すことができなくても、その場にいることが要求される。仲間の話を聞くうちに、自分も話せるようになっていくのだ。

話し始める時に必ず「薬物依存の○○です(アノニマスネームを言う)」というのだが、その言葉を初めて聞いた時、「これだ!」と思った。

自分も「罪人のMです」と堂々と言えたらどんなに楽になるのだろうかと思った。素直に、ありのままの自分を認め、受け入れることから人の再生は始まる。これが原点だ!と教えられた。

以来、美野島に行くのが楽しみになり、ダルクの仲間と一緒の空間にいてソファーに身を沈めることが「至福の時」となった。たまに「新しいメンバーさんですか」と言われたりしたが、その時も幸せな気分になったものだ。

今も教会で働いているが、教会のメンバーも「罪人:弱い者」と自認すれば、もっと素晴らしい仲間になれるのでは、と思っている。

カテゴリー: 249号(2022年3月), ニューズレター パーマリンク