【NewsLetter263】NPO法人九州DARC代表 大江昌夫

 木々の緑が日に日に鮮やかになってきました。ダルクから見える青楓がひときわ目に清々しく映ります。今月から新型コロナも5類に移行となりましたので、福岡にも観光客が戻りつつあり、行楽を楽しむ様子の人も多く、街も賑やかさを取り戻した様子です。

 九州ダルクでも、何年かぶりにようやくメンバーを映画を観に映画館へ行かせてあげることができたり、市の体育館でトレーニングの団体利用が出来るようになりました。メンバーは皆長い間、よくマスクや手洗いの生活を続けてくれたと思います。しかしまだ、感染症が収まったともまだ安全とも言えない状況ですので、今後も油断せず感染予防に努めていきたいと思っています。

 さて話は変わりますが、この頃、謙虚さについてメンバーと話す機会がありました。私達アディクトが取り組む12ステッププログラムでは、頻繁に耳にし、口にする言葉です。私も含めて、「謙虚さが必要だ」「謙虚さがない」などとよく言いますが、本当のところ謙虚さとアディクションの問題がどう結びついているのかよく分からないままに、言葉だけが一人歩きしてしまうような所もあります。

 12ステップのプログラムについてご存知ない方には尚更、謙虚さと薬物の問題がどう関係するのか不思議に思われるかと思います。メンバーに「謙虚さ」とは何だと思う?と聞いてみると、色々な答えが返ってきました。

 人の言うことを黙って聞くこと。
 言われたことをはいと受け入れる事。
 言い返さない事、人に先を譲る事、自分を後まわしにする事。
 人に対して敬語を使う事、人として礼儀を守る事、角が立たないようにする、卑屈にならない等々。

 それぞれが思「謙虚さ」がありました。結果、自分思う「謙虚さ」と相手が思う「謙虚さ」が違うという事についての話となりました。

 これらはアディクトだけの話では無いかと思いますが、私達は時々自分の固定観念を元に、自分の思う正しさを押し通そうとしますし、そのことがよくトラブルや人間関係の悩みにつながっています。

 ダルクの中での人間関係は練習の場です。自分の短所や欠点に真摯に向き合っていく際に、今までの生き方や考え方に疑いを持ち、自己中心的なものの見方から一歩離れて自分を見つめ直す時、自分の内側に小さなスペースが生まれるのがわかります。

 自分の考えで頭の中がいっぱいの時には気づきませんが、それは相手の話を聞くこと、受け入れることが出来るスペースです。「謙虚さ」はそこに生まれてくるような気がしています。謙虚さを育むには他者が必要です。

 自分の人生の問題の答えなど、何も分からない。だからこそ求め、人の話に耳を求める事ができる。そのことが分かればダルクも中々面白い所です。ここでの練習で得た経験が、これから社会の中で生きていく上で、少しでも彼らの力になってくれ事を願います。

 ダルク運営の点では難しい面がいつもあり、いつも支援してくださる皆様には、感謝しかありません。献金の件などでいつもお願いしてばかりではありますが、これからも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

カテゴリー: 263号(2023年5月), ニューズレター パーマリンク