ダルクは、薬物依存症者のための自助回復施設です。ここでは薬物依存症からの回復において、強制も暴力も命令も威嚇も使いません。決まりごとは、ダルクプログラム12ステップを実践すること、1日に2ないし3回のダルクミーティングに参加すること、薬を使わないし持ち込まない、そのほか、自分のことは自分で決める、というだけです。
ここに集う仲間は、先行く仲間とともに回復の道を歩みます。薬物依存は、自分ではどうしようもない生きづらさを基調としたものです。
家族を含めて、身近な人とのかかわりが噛み合わないし、噛み込んでは煮詰まる。学校や社会が敵対的でいじわるく感じる。自意識は高く、自己評価はとんでもなく低い。
だから、なにをやってもうまくいきそうにない。そんな生きづらさの中で人は薬物に依存してしまいます。
だから、薬物依存症者は緩序な自傷、自殺をしているとも言われ、薬物を絶って回復の道を歩むとき、自殺企図に悩まされます。現に少なくない仲間が、回復の途中において薬物を多量に服用しあるいはそのほかの方法で自らの命を絶ってきました。
ダルクミーティングでははじめに「平安の祈り」を唱えます。「神さま、わたしにお与えください。自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを。変えられるものは変えていく勇気を。そして、二つのものを見分ける賢さを」と。
ここで「神」というのは特定の宗教のそれではありません。自らが信じる神であり、信仰がなければ、自分の心の奥底にあるもの、魂の源というくらいの意味です。
それでは、12ステップを紹介しましょう。
- 私たちは、アディクションに対して無力であり、生きていくことがどうにもならなくなったことを認めた。
- 私たちは、自分より偉大な力が私たちを正気に戻してくれると信じるようになった。
- 私たちは、私たちの意志といのちを、自分で理解している神(ハイヤーパワー)の配慮にゆだねる決心をした。
- 私たちは、探し求め、恐れることなく、モラルの棚卸表を作った。
- 私たちは、神に対し、自分自身に対し、もう一人の人間に対し、自分の誤りの正確な本質を認めた。
- 私たちは、これらの性格上の欠点をすべて取り除くことを神にゆだねる心の準備が完全にできた。
- 私たちは、自分の短所を取り除いてください、と謙虚に神に求めた。
- 私たちは、私たちが傷つけたすべての人のリストを作り、そのすべての人たちに埋め合わせをする気持ちになった。
- 私たちは、その人たち、または他の人びとを傷つけないかぎり、機会あるたびに直接埋め合わせをした。
- 私たちは、自分の生き方の棚卸を実行し続け、誤ったときは直ちに認めた。
- 私たちは、自分で理解している神との意識的触れ合いを深めるために、私たちに向けられた神の意志を知り、それだけを行っていく力を、祈りと黙想によって求めた。
- これらのステップを経た結果、スピリチュアルに目覚め、この話をアディクトに伝え、また自分のあらゆることに、この原理を実践するように努力した。
「こんなん、ヤクチュウにならないと、とてもやれないよね」と僕。「ヤクチュウになってよかったってことですかね」と施設長。
いかがでしょうか。あなたはどのステップまで実践できそうですか。私はステップ1すら、実践できそうにありません。