【NewsLetter238】バス/バースデーを迎えた仲間の話

薬物から抜け出せなかったあの頃は本当に絶望しかなかった。

一日中電気のついていない、カーテンは閉めっぱなしで光は入ってこない部屋で、テレビは見ないのに、自分の行動音が人に聞こえないようにと付けていた。

5秒に1度は深い溜め息をつき、鏡に映る自分の痩せこけた姿を見て、また深い溜め息の繰り返し。窓の外から幸せそうにしている人たちの声が聞こえるたびに、何もかもぶち壊したくなる。

家の中で母と顔を合わせればいつも、泣きそうな顔をしてこっちを見ていた。すれ違うたびに小さい声で、「いい加減にしてよ」と聞こえるように言う。

自分の部屋に戻ると下の階から母の奇声が聞こえる。そのせいで、自分のせいで家族がバラバラになりかけていた。父に何度も頭を下げ、もう薬は使わないと誓った。

それなのに30分後にはまた薬を買いに行った。

止まらなかった。助けてほしかった。本当に苦しかった。自分が自分じゃ無くなっていく感覚を、自分が一番良く分かっていて怖かった。

薬はもう使いたくない。でも、使わないと自分を制御できない気がして使い続けていた。生きることに疲れ、もう人生を終わらせたかった。生きているだけで迷惑をかけている事が嫌だった。

でも、生きるために使わないといけない。どうしたら良いのか分からなかった。そんな中でダルクにつながることが出来た。これで使わずに済むと安心した。

長いこれからの人生を苦しみながら生きていくのか? それとも施設でプログラムを受けて幸せに生きていくのか?

自分は幸せに生きていくことを選んだ。ダルクにつながり、確かに上手く薬は止まっている。だが何故か苦しさを感じる。薬を止めるだけで、使っていないだけで、生き方は変わらなかった。

むしろ使っていた時よりも苦しくなっている。薬物を使った事はきっかけに過ぎなかった。自分の生き方に根本的な問題があった。プログラムの中でそこに気づいた。

この8年間は色々あった。色々な自分を知ることが出来た。現在ダルクに居ること、この自分の選択は間違いではなかったと振り返って思う。

それでも薬物を使っていないから何もかも上手くいくわけじゃない。自分が思っているほど現実は上手く行かないものだとも知った。

苦しいこともある。嫌になることも、回復を上手く楽しめず逃げたくなる時だって、人間関係でぶつかる時だってある。多分これからもそれは続く。

だからといって、薬を使う必要はもうないということも知った。以前までは解決のつもりで薬を使ってきた。使うことでどうなってきたかと言えば、解決どころか事態はいつも悪化していた。

薬がないと生きられなかった自分と、今の自分は違う。俺には仲間が居る。プログラムがある。スポンサーが居る。ダルクがある。ハイヤーパワーは自分を見捨てたりしない。感謝。

カテゴリー: 238号(2021年4月), ニューズレター タグ: パーマリンク