【NewsLetter163】九州DARC代表理事・大江昌夫

 福岡ではサクラの開花宣言もされ、日増しに春らしいくなってまいりましたが、みなさまにおかれましてはお変わりなくお過ごしでしょうか。

 突然ではありますが、1月にこの九州の地で共にプログラムを歩んできた仲間が天に召されました。その彼との出会いが13年前で、彼がまだ肥前に入院していたころでした。

 それから彼は刑務所に行き、その足でダルクに入寮してきてから10年。彼がガンを患ったのが3年半前――。

 3年前、タメさんが天に召させた時も感じたことですが、あれから3年、共に支えあってというより、ガンという病気を患いながらも支え続けてくれた仲間の死は、同じように体の一部を失ったような喪失感があります。

 完治する事がない、といわれる依存症と向き合い、治らずとも良くなれると信じて仲間と共に歩み、手術でガンを取り除き、長い抗ガン剤治療にも積極的に取り組み、同じく良くなれると信じて、今日一日を生きていました。

 ガンの再発が確認された時、彼から相談がありました。「もう俺には未来がないから彼女とも別れる。もう死んでもいい、こんな俺の事はほっといてくれ」と、涙しながら絞り出すように。

 2人でたくさん話をしましたが、私が伝えたことを要約すると、「自分のためにも、彼女や仲間たちのためにも生き続けてほしい。君の生き様をみせ続けてほしい」ということでした。

 それから彼は生き続ける事を選び、死との恐怖と闘いながらも、私たちにいつも笑顔と勇気と希望を、天に召されるその瞬間まで与え続けてくれました。

 秀さんの生き様をみていると、自分の病気と向き合いながら、今日だけを生きると決心した日のことを思い出しました。

 秀光さん、本当にお疲れさまでした。そして本当にありがとうね。

 大変なことは重なるもので、その後スタッフのひとりがリラプスしてしまいました。

 愕然とし、傷つき落ち込み、怒っていた私は、また吸い出した煙草に火をつけた時、「再び始めなさい」という言葉が頭に浮かんできて、このプログラムは愛と希望で、決して独りではないということを思い出しました。

 高慢な私は、それをすぐに忘れ、独り相撲をとってしまいます。今の私がいるのはこのプログラムと多くの仲間と支援してくださっているみなさまのお陰だというのにね、バカですね。

 この言葉を伝えてくれた仲間は、もうここにはいません。もう声を聞く事も共に笑い、時には叱ってくれることもないけど、しかし彼らは私たちの中に生き続けています。

 しばしのお別れです。向こうでタメさんベンツさんや仲間たちと待っていてね。

カテゴリー: ニューズレター タグ: , , , , パーマリンク